コラム

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2023.07.18

法人資産の運用を考える(56) 金融業界の潮流と法人資産運用の未来(4) 資産運用自体の優位性・強化の限界と販売・マーケティング依存の構造

ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一

身もふたもない話だが、投資家が最終的にどれだけの投資利益を得られたかは、

それぞれの投資家がどれだけのリスク(時間的なリスクを含む)を引き受けたかに

依存するのであって、個々の投資有価証券や金融商品を投資家に販売する

販売会社(銀行、証券、信託、IFAなど)、ファンドの運用会社、

助言する年金コンサルなどの優位性や力量にはほぼ関係が無いと著者は感じている。

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例えば、A銀行とB銀行の定期預金金利では、A銀行の預金金利が高かったとする。

目先の投資家利益を考慮すればA銀行に預金するのではないだろうか。

しかしながら、10年、20年スパンではどうだろう。

A銀行の預金金利が常に高いとは限らない。

B銀行の方が高い時もあるだろう。

それは全ての預金金利は市場全体の平均金利がベースとなっており、

A銀行だけが独占的に市場平均金利を提示し続けるのは難しいと考えられるからである。

超長期で投資家が手にする預金パフォーマンスは預金の市場平均金利近くに終点してゆく。

同様の事態は、債券(普通社債、劣後債、永久劣後債、仕組債、それらで運用するファンド

に細分化しても、そのカテゴリーごとの平均でみれば同じ)、

REIT(オフィス、倉庫、商業施設、住居用不動産、それらで運用するファンドなど、

そのカテゴリーごとの平均でみれば同じ)、

株式(高配当、ESG、成長株、割安株、それらで運用するファンドなど、

そのカテゴリーごとの平均でみれば同じ)でも起こると容易に推察できる。

つまり、超長期でみた場合の投資利益は、市場平均(預金市場、債券市場、

REIT市場、株式市場全体の市場平均に近いものであろうことが推察できる)。

むしろ、個別銀行、個別債券、個別REIT、個別株式およびそれらの個別セクターに

偏ったり、次々と優位と思われる投資対象に乗り換えたりすることで、

(ウォーレンバフェット氏やイェール大学基金のように)

まれに大当たりする場合もあるが、見立て違い、デフォルトなどの

復元困難な損失を被ってしまう可能性も超長期のスパンでは大いにある

のではないかと危惧するのである。

もう一度申し上げる。

身もふたもない話だが、投資有価証券や金融商品を投資家に供給する

販売会社(銀行、証券、信託、IFAなど)、ファンドを運用する運用会社、

コンサル会社の経営者も、(意識的か、無意識的にか)

(1)会社の収益に直結するのは金融商品の販売でありマーケティング戦略であること

(2)運用力そのものを意図的に改善することは難しいこと

の二点に気が付いているように思われる。

(2)は「それを言ってはお終い」的な不都合な真実だ。

販売会社(銀行、証券、信託、IFAなど)、ファンドの運用会社、

助言するコンサル会社の社長は、会社の内外両方に向かって、

「我が社の運用の優越性」と「今後の経営方針としての運用力の強化」

を言い続けていなければならない。

一方、運用力の強化が本当に可能で、運用パフォーマンスの優越性によって

社業を伸ばしていくことは、時間とコストをかけても非常に困難であると

ずっと昔から悟っているかのように思われる

(下線部は、山崎 元 氏

 バイサイド・セルサイドと、稀少化する真のバイサイド | トウシル 楽天証券の投資情報メディア (rakuten-sec.net) より引用 著者が意訳)

だから彼らはマーケティング、販売に注力せざるを得ないのである。

だから「我が社の運用の優越性」と「今後の経営方針としての運用力の強化」を

投資家に対して強くアピールし続けるしかないのである。

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