コラム

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2025.07.13

法人資産の運用を考える(80)苦悩が絶えない債券投資家

ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一

【急上昇した債券利回り】

 2025年5月現在、日本国債利回りは、10年物で約1.5%、15年物で約2%、20年物で約2.4%である(40年物に至っては3.1%を越えている)。ちょっと前、2016年の日銀によるマイナス金利誘導時、20年国債に至るまで全てマイナス利回り(30年~40年国債でも利回りは殆どゼロ%)という状態が数年間も続いた。それも、今は遠い昔の夢のようではないだろうか。

 当時、多くの法人の運用担当は超低利回りに頭を抱えていた。いつの日か、債券の利回りが2、3%にもなってくれれば、あるいは、せめて1%以上になってくれればと、多くの法人の運用担当者が夢見ていたものである。その頃を思えば、現在の債券利回りは相応に高く、頭を悩ます法人運用担当者もさぞかし減ったに違いないと思われるかもしれない。

【苦悩が絶えない債券投資家】

 ところが、である。最近では、著者の経営する投資顧問会社には永らく債券を中心に資産運用してきた法人からの照会が明らかに増えている。趣旨は債券以外の資産にも分散投資を検討しているので相談に乗ってもらえるか?というものである。

 つまり、今の債券利回りの上昇は手放しでは喜べないと考えている債券投資家が少なくないようである。

【既保有の債券価格の下落】

古くから、法人における債券運用では「満期が来れば額面で償還されるので(そのハズなので)債券は安全である」と法人内部で説明・理解されることが多いことが、公益法人協会の資産運用アンゲート2023の結果からも明らかになっている。だから「債券価格の下落は、それがどんなに大きくても、許容、無視できる」という趣旨のアンケート回答が多かった。

 理論上、利回りが1%上昇すると、10年債の債券価格は約▲10%下落する。20年債であれば約▲20%下落、30年債であれば約▲30%下落となる(今般は15年債、20年債、30年債超の方が、利回り上昇の度合いが大きいので超長期債ほど、大暴落に近い下落率に違いない)。さすがに、既保有債券の大暴落を目の当たりにして、法人の役職員の債券に対する認識も変化しはじめたのかもしれない。

【終わりの見えないインフレと債券投資】

 消費者物価指数(総合)は、2022年度3.2%、2023年度3.0%、2024年度3.0%と3年連続で3%台での推移が続いている(直近2025年3月では前年同月比3.6%の上昇)。

 つまり、仮に、債券利回りが3%であったとしても、インフレ(物価上昇)を考慮した実質の利回りはゼロか、マイナスの状態が続いているということになる。さずがに、債券に傾倒した運用だけではインフレ(物価上昇)リスクには勝てない、実質的な運用収益は勿論のこと、実質的な運用元本も棄損させてしまうのではないか?という債券運用についての常識的なリスク認識できる法人の役職員が現れ始めたのかもしれない。

 債券投資(預貯金を含む)が中心の法人が被る機会損失について、過去は取り戻せないが、未来については適切に分散投資することで対処することはできると著者は考えている(詳細は拙著「非営利法人のための資産運用入門」を参照)。

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