コラム

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2025.11.20

法人資産の運用を考える(84) 法人資産運用に関わる人材の資質、職歴についての考察

ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一

先日、某法人の資産運用担当者から10年ぶりのコンタクトがあった。

小職の書籍やセミナーなどを参考に、独自に方針を立てて、ETF(上場投資信託)を使ったポートフォリオ運用に挑戦してきたという。運用収入増加にも成功し、組織内で一定の評価も得られたという。

しかし、インフレ国内金利の上昇など10年前とは経済・投資環境が様変わり

このままのポートフォリオで良いのか意見が欲しい(不安も感じているようである)。

この法人のポートフォリオの状況は、為替ヘッジ外債ETF、その他債券、預金の合計が9割を占め。残りの1割程度が、内外株式のETF、内外REITのETF、その他、という資産構成割合だと言う。

 すぐに連想したのは農林中金である。

為替ヘッジ外債やその他債券に偏重して投資してしまい。巨額損失を被った。それと似たようなポートフォリオ(資産構成割合)に陥ってしまい、利子配当収入は得られているが、債券の評価損が大きくなり、ポートフォリオ全体のパフォーマンスの足を大きく引っ張る状況を懸念しているのだろうと想像できた。

拙著や資産運用セミナーで一貫して提唱してきたポートフォリオとは、株式、REIT、債券などの全体のバランスに考慮した分散投資である。債券だけではなく、株式、REITにも相応の割合を分散投資して、ポートフォリオ全体の保全も図るものである。しかし、このような拙著や資産運用セミナーの意図と、読者や受講者の受け取り方とには大きなギャップが生じ易いと再認識、今後の課題とさせられた。

 多くの法人の運用人材、また小職が経営する投資顧問会社のクライアント法人の運用人材を眺め、関わってきた長年の経験から、上記のような事例に関して思い当たることがある。各法人においてもヒント、留意点としていただきたい。

それは法人のポートフォリオ(実際の資産構成割合)は、その法人の運用人材の資質や職歴と少なからず関係がある(100%の相関とまでは言わないが)。

ある資質や職歴を持つ運用人材(法人内部の運用責任者・担当者、役員、資産運用委員、外部の助言会社などまでを範囲とする運用人材)が法人に関わるか関わらないかで、法人のポートフォリオ(実際の資産構成割合)が一定方向に偏るリスクが高まる。

具体的には法人のポートフォリオ(実際の資産構成割合)が債券に偏りがちになるか、株式やREITにまで相応の割合を分散投資できるか(債券をできるだけ保有しないで、株式やREITなどに投資できるか)は、法人の運用人材が、①株式、REIT、債券などの本質を理解しているか、②それらを組み合わせたポートフォリオ運用の本質を理解しているか、否かにかかっている。

更に③それらを組み合わせたポートフォリオ運用に関わった経験が浅いか、深いかという過去の職歴に強く影響される傾向がある。

小職の経験では、運用会社、運用コンサルなどの職歴を持つ運用人材が法人に関わっている場合、その法人のポートフォリオは株式やREITにまで相応の割合を分散投資できている(債券をできるだけ保有しないで、株式やREITなどに投資できている)。

一方、金融の職歴を持たない人材しかいない法人、あるいは、金融でも銀行・保険系の人材しかいない法人のポートフォリオは債券に偏りがちになる傾向がある(おそらく、株式やREITなどの重要性を理解・説明することが彼らには困難であるからであろう)

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