コラム

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2025.08.08

法人資産の運用を考える(81) インフレ時代と資産運用の意思決定基準(1)

ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一

【顕著かつ定着してしまった感のあるインフレ、物価上昇】

普段、著者が買い物するスーパー、飲食店でも値上がりを実感する。

その他のサービス価格、工賃、人件費などについても値上げのニュースは毎日止まない。

法人の年度事業費や管理費に含まれる様々な支出項目を把握する役職員の皆さんも同様に物価上昇、インフレを実感されておられると思う。

消費者物価指数(総合)は、2022年度3.2%、2023年度3.0%、2024年度3.0%3年連続で3%台での推移が続いている(直近2025年4月では前年同月比3.6%の上昇)。

つまり、2020年の物価を100円とした場合、2025年4月時点では111.5円まで値上がりしていることを統計データは示している。言い換えれば、当時100円で変えたモノが111.5円出さないと買えなくなったということであり、それだけ持っている現金の実質価値は下がってしまったということである。

【インフレ、物価上昇と非営利法人財務】

 この現実は、法人の年度事業支出への悪影響は勿論であるが、保有している資産の実質的な価値を減らす圧力としてかかり続けることであり、悪影響は更に甚大である。

ちょうどリタイアしてしまった個人が、毎日の出費の増加と保有する資産価値の目減りにおびえて暮らす状況と、今の非営利法人のおかれた状況とは酷似する(一般に財団法人や学校法人などは本業で積極的に儲けを追求できる構造にはなっていないからである)

【インフレ時代と資産運用の意思決定基準】

 さて、このようなインフレ時代の中で法人事業の持続可能性を高められるような、資産運用(資産管理)の意思決定基準について整理してみたい。

まず、インフレ、物価上昇率が今後どうなるかであるが、結論を言えば、残念ながらそれは誰にも判り得ない。

現在の3%台で定着してしまうのか、今以上のインフレになってしまうのか、それとも数年度には政府日銀の誘導目標である2%前後へと今よりも低い水準へと落ち着くことになるのか、どんな専門家であろうが、時間がたってみないと判らないのである。

だれにも判り得ない中で下す資産運用の意思決定の定石の第一は、甘い見込み、期待をなるべく排除して考えることである。

つまり、インフレ物価上昇率は急激に低下するなどという前提をなるべく置かないことである。

【現預金】

甘い見込み、期待をなるべく排除して意思決定を下すならば、現金、預貯金は、持てば持つほど、危険であることは説明するまでもない。

支払いに必要な以上の現金、預貯金を持たない方が賢明ということになる。

【債券】

次に、債券も過度な保有は賢明でないという意思決定に帰着してしまう。

なぜなら現時点の利回り程度では実際のインフレ率3%、更に政府日銀の誘導目標である2%さえも下回ってしまう

(2025年6月現在の国債利回りは、10年物=約1.4%、15年物=約2.3%、20年物=約2.4%、30年物=約2.9%、40年物=3.1%に過ぎない)。

インフレ率を差し引いた実質金利は殆どゼロかマイナスだからである。<インフレ時代と資産運用の意思決定基準(2)に続く>

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