コラム

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2025.09.12

法人資産の運用を考える(82) インフレ時代と資産運用の意思決定基準(2)

ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一

<インフレ時代と資産運用の意思決定基準(1)から続く>

インフレ時代の中で法人事業の持続可能性を高められるような、資産運用の意思決定基準について整理を続けたい。

消費者物価指数(総合)は、2022年度3.2%、2023年度3.0%、2024年度3.0%と3年連続で3%台での推移が続いている(直近2025年5月では前年同月比3.5%の上昇)

預金は勿論、債券の利回りさえも物価上昇率と比べれば、実質的な利回りはゼロかマイナスということになる(2025年7月現在の国債利回りは、10年物=約1.5%、15年物=約2.4%、20年物=約2.5%、30年物=約3.1%、40年物=3.3%に過ぎない)つまり、債券に傾倒したのではインフレに勝つ確率、法人事業の持続可能性をいたずらに低めてしまうのである。

【債券投資の更に厄介な点】

仮に利回り3%の長期債に傾倒しても、実質利回りで考えればゼロかマイナスになることは述べた通りである。

更に厄介なのは、債券運用の元本の実質価値も蝕まれる可能が高いということである。

例えば、財団法人や社団法人などは運用益を年度事業の為に支出消費する法人体である(学校法人のように運用益を将来の為に積み立てておくということができない)。

つまり、債券運用してその運用益を使い続けていれば最後に法人に残るのは元本の額面金額に過ぎない

現在の債券運用の額面10億円と将来の償還時の額面10億円とでの実質価値では、それまでの物価上昇(年率)×残存年数の分、目減りしてしまうという計算になる。

しかも、債券運用でインフレを上回る利回りを追求すると、長期債を買うか信用度を落とすかしかない。金利上昇局面では債券価格は下落する。つまり、(遠い)償還まで「塩漬け」状態に陥りやすい。

インフレが続いた場合は座して死を待つような状態に陥ってしまう。

【インフレと意思決定の帰着点】

 であるから、消去法的ではあるが、預金・債券以外の資産、つまり、株や不動産(REIT)にも分散投資することが、インフレリスクを考慮した意思決定として帰着する(預金・債券を全否定するものではない。支払いなどに必要な分だけ預金・債券も保有することは合理的と考える。)

 株や不動産(REIT)の特徴として、

①その配当収入を事業の為に使い続けたとしても、10億円の元本が将来10億円以上の評価へと価値が増えている可能性が出てくる。

②配当自体も長期的に増配する可能性もある

(これら①②の特徴が、株や不動産(REIT)は長期的にインフレ耐性があると認識されている所以である。

一方、預金・債券は①②の特徴を持たない。故にインフレ耐性に劣るのである)。

 この場合、個別銘柄で株や不動産(REIT)を保有することは避けた方が良いと考える。

なぜなら、個別の株や不動産(REIT)は個々の企業の業績次第の側面が強くなり、必ずしも①②の特徴・効果が一定に得られるか判らないからである(そもそも個々の企業の業績のモニターなども法人の手におえるものではない)

<インフレ時代と資産運用の意思決定基準(3)に続く>

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