コラム

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2025.12.14

法人資産の運用を考える(85) 母体企業株式とその(公益)法人の“浮沈”

ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一

公益財団法人などが設立時に創業者(一族)などから寄付された株式を保有し続けることの問題の深刻さは指摘され続けて久しい。

 母体企業個別の業績、株価、配当は時代と共にどんどん変わってゆく

つまり、それを保有する(公益)法人の“浮沈”は、(公益)事業の安定遂行の意思とは関係なく、どこが母体企業か(どの企業の株式持っているか)によって、運命づけられている

すなわち、そもそも母体企業株式とは、(公益)事業の安定遂行というそもそもの法人の本分に対して、相反するリスクを持つ資産なのである。

それでは、なぜ母体企業株式を保有し続けるのか?

小職が投資顧問として見聞きしてきた長年の経験から整理してみたい。母体企業株式の今後の取り扱いについての議論の参考にしていただければ幸いである。

【なぜ母体企業株式を保有しているのか?】

法人の設立時に母体企業の創業者(一族)から寄付されたケースが殆どである。寄付の動機は大きく2つある。

(1)企業オーナーとしての成功を(公益)事業を通じて広く世の中にも還元したいという動機

(2)個人で保有する株式を自ら設立した(公益)法人に寄付することで、相続税対策(相続税で持っていかれるのではなく、自らの死後もある程度コントロールしたい)という動機

【なぜ今も母体企業株式を保有し続けているのか?】

(公益)法人に株式を寄付した時点で創業者(一族)にとっての相続税対策は完了しているハズである。

ただし、彼(彼女)らの存命中は愛着のある株式を売却するのではなく、そのまま保有し続けながら、配当金などによって(公益)事業を遂行することはある種の「誇り」なのかもしれない。

しかし現在では創業者(一族)=寄付者は既にお亡くなりになっているケースが殆どである。

それなのになぜ母体企業株式を保有し続けるのか? 

小職の経験では、次の①~③のいずれか、あるいは、それらが複合した理由による。

①母体企業の株主総会において、企業提案に無条件に賛成してくれる議決権数を持つ株主として、(公益)法人が票読みされている。

創業者(一族)=寄付者の子息・親せきなどが(公益)法人の役員などに就任し、(公益)法人をコントロール、関与しつづける。このようなケースも母体企業株式を保有し続ける圧力として作用しやすい。

③ ①ほどの議決権数を有する発行済み株数のパーセンテージも保有していない、かつ、②のケースにも該当しないにも関わらず、既にお亡くなりの創業者(一族)へ敬意を示すべき、犯すべからざるという感情的な理由から母体企業株式のまま、長年の慣例として保有し続けている(そのような(公益)法人の役職員の多くは母体企業から送り込まれている実態)。

また上記①のケースもそうであるが、母体企業から(公益)法人が寄付金をもらっているケースも散見される(母体企業の減配など(公益)法人の運用収益の減少を企業が穴埋めするような寄付金の増加まで散見される)。

もはや、これは母体企業側のコーポレートガバナンスの問題であり、身内的な慣れあいを良しとしない外部の株主の目が今後ますます厳しくなると予想される。

(公益)事業を安定遂行すべき(公益)法人にとっても、株主利益を追求すべき母体企業にとっても、今後の“火種”と言っても過言ではない。

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