2026.08.24
法人資産の運用を考える(93) 最近の法人資産運用の相談傾向について(消極運用法人の変化)
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
著者が運営する投資顧問会社には毎年、いろいろな財団・社団法人や学校法人などから資産運用の相談や照会が舞い込んでくる。最近の照会法人の属性や相談内容の傾向についてシェアしたい。
【以前の照会法人の属性や相談内容の傾向】
2008年のリーマンショックやそれ以降、2020年のコロナショックぐらいまでは- ①仕組債運用をする法人
- ②仕組債以外の債券運用をする法人からの相談・照会
仕組債からのインカム収入が激減もしくはゼロになってしまい、事業運営に支障をきたしているので、何とかしたい。仕組債の銘柄選択が担当の属人的な判断に陥っており、法人としての責任問題・ガバナンス問題が顕在化しているので、何とかしたい。あるいは、仕組債以外の手堅い債券運用でも、超低金利の為、事業に必要なインカム収入には遠く及ばないので、何とかしたい。という種類の相談や照会が中心だったのである。
つまり、もともとインカム収益の獲得に対して積極的な意思を持つ法人からの相談や照会が多かった
(仕組債や劣後債などによる必要インカム収入の獲得・安定に行き詰まりを感じた法人、事業遂行の為に現状のインカム収入の更なる底上げを図りたい法人など)。【最近の照会法人の属性や相談内容の傾向】
ところが最近、照会先の法人の属性や相談内容の傾向は大きく異なる。 まず、照会先法人の属性であるが、ずっと長い間インカム収益の獲得に対して全く積極的では無かったタイプの法人からの相談・照会が増加したように思われる。すなわち、預貯金、国債などの公債、社債に至ってでもBBB以上の投資適格社債までしか、ずっと保有してこなかった法人からの相談・照会が増えているのである(このような法人の多くは2017年と2023年の公益法人協会のアンケートの中でも運用収益の獲得に消極的な『資産管理型法人』などとして分類している)。
また、彼らの主な相談内容であるが、預貯金、国債などの公債、社債以外への資産にも分散投資を検討したい、図りたいという内容が多い。 現在、預金金利も、国債・社債利息も昔に比べると非常に高くなっている。少なくともインカム収入という点では、一見、今のままの運用を続けても何の問題も無いようにも思うかもしれない。 しかしながら、彼らは口をそろえて、インフレから保有する金融資産の価値を守る必要があると言う。 某学校法人は、このまま大量の現預金を眠らせ続けると、かなりの確度で実質的に目減りするリスクを一部役員から指摘されたので、何とかしたい。また別の法人でも預金と債券中心ではインフレで目減りするリスクを役員会にて指摘されたので、対応を図りたい。という内容が多い(もともと経常的な運用益を重視しないこのようなタイプの法人の場合は、このような『外圧』が効くようである)。 つまり、積極的に運用収入を追求したいわけではないが、インフレによって保有する金融資産が目減りしてゆくリスクは避けたいという動機付けの法人が増加しているのである(当然、保有する現預金+有価証券の全体に対して、インフレ率以上の運用収益を達成しないと金融資産は実質目減りすることになる)。