コラム

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2022.08.14

学校法人の資産運用を考える28債券の基本がわかるシリーズ10為替ヘッジ①

学校法人資産の運用を考える粟津 久乃

ここ1年間の為替の変動は非常に大きいものがあります。

世界的な利回り水準が高まる中、日本の金利が上昇しないため、

海外の債券に魅力を感じる公益法人も多いでしょう。

しかし、直近のような大きい変動の為替を勘案すると

円高に動いてしまったら、と考えると難しいと考えてしまうのも事実でしょう。

今回は、為替を回避する手法、為替ヘッジについて纏めます。

為替ヘッジを理解するためには、まず、為替について深く知る必要があります。

そのため、外国為替の現状や、外国為替の影響から考えてきましょう。

◆外国為替とは

外国為替取引とは、自国の通貨と、他国の通貨を交換することです。

そして、外国為替レート(外国為替相場)とは、その通貨を交換するときのレートになります。

余談ですが、「為替」という言葉の意味は、現金を直接的に支払わずに支払いをすることです。

今回のテーマ、外国為替以外に、内国為替と呼ばれるものもあります。

資金を直接、渡さず、銀行で振込したり、口座間を振り替えたり、

ネット上で商品を買うの支払い方法、こうしたものも、為替取引の一種です。

要は、為替とは現金を直接渡さず、簡易的に、資金を移動させる方法のようなものです。

さて、今回話題となる外国為替(ここより簡単に為替と表記)ですが、

2022年8月上旬時点では米ドル為替は133円ほどになっており、

ここ最近は大きな変動を迎えています。

コロナ渦、2020年3月9日に米ドル為替は102.23円を記録しました。

例えば、現状の130円台と比較をすると、102円⇒130円への変動幅は約21%です。

近いところですと、2022年3月1日には114.95円をつけています。

2022年5月上旬には130円台となっていました。

114円⇒130円への変動幅は約11%となります。

3月から2か月程度で、11%も為替だけで変動しているのです。

この変動幅は、大きいと感じませんでしょうか。

この為替の動きは、円安なので、既に外貨建て債券で運用されている方は、

良かったと考えるかもしれません。

(直近のFRBの政策による金利上昇に関しても債券単価下落は考慮せず、

ここでは為替に焦点を当てます)

しかし、為替というものは、当たり前ですが、上下に動きます。

円高に動くことがあれば、あっという間に、資産が11%目減りするのです。

為替の怖いところは、このように意外に変動幅が大きく、資産へのインパクトが大きいことです。

それも、為替自体は収益を何も生み出しません。

株式のような配当も、債券のような利息も、不動産のような賃貸収入も何もなく、

為替自体には、実体経済は無いのです。

この何も生み出さない「為替」というものから受けるインパクトには注意する必要があります。

◆外国為替の変動要因は何か

まず、前提を確認しましょう。

為替にはメインの変動要因がいくつかありますが、

あらゆる要素が混じり合い決まっていきます。

そのため、為替は先が読めませんし、誰にも将来はわかりません。

皆さんが為替のプロのように為替を予想することも意味がないですし、

まして各社金融機関の年初の為替予想で動くことはあまり意味のあることだとはいえません。

株式のように実体経済があって、そこに財務諸表があるような実体経済を伴わない、

為替に関しては予想することが非常に難しく、為替のプロでさえも予想を外すことが多いからです。

さて、とはいっても、金融機関にあたかも、専門的に為替を語られて、

鵜呑みにしないよう、おおよその変動要因を説明致します。

為替は、自国通貨以外の他国の通貨に対して、

安いか高いか、円安か、円高か、を示すものですが、

その変動要因は例えば下記のものがあります。

金利要因・・・海外の中央銀行及び、日銀の利上げ/金融の引き締め観測

需給要因・・・米ドルやユーロに対する決済資金需要(四半期末などの決済需要)、

金融規制(資本増強等)による外貨の供給変動、

邦銀などの外貨建て資産への投資需要(例えば貿易において、輸入が増えると外貨支払いが増加し、通貨が安くなる)

先行きの不透明感からのリスク回避の動きが高まり、基軸通貨である米ドル需要が上昇

◆外貨建て債券購入時の為替について

では、ここから、実際に外貨建ての債券を購入した時、

どのように為替がでるのか影響をみていきましょう。

例えば、債券を下記の図のように取引したとして、考えましょう。

なお、債券単価は変動しないと仮定します。

例えば、学校法人が外貨建て債券を購入したとしましょう。

1ドル=100円の時、1,000,000ドルの額面の外貨建て債券を新発で買いました。

(単価は100円で、債券単価は変動しないと仮定)

償還時、円安であり、1ドル=110円の為替ならば、日本円で戻ってくるのは1億1千円です。

為替差益は、1千万円となります。

一方、償還時、円高であり、1ドル=90円の為替ならば、日本円で戻ってくるのは9千万円です。

為替差損は▲一千万円となります。

実際は、この上に受取利息が加算されたものが、リターンの合計となります。

円高の1ドル=90円の場合は、1億円の利回り1%ですと、受取利息が1千万円なので為替を加味すると利益は出ないということになりますね。

このように利回りの低い外貨建て債券利回りを選択することは利益が出ない可能性が高まります。

為替も加味して、利益が出るのか、という観点からも外貨建て債券を選択する必要がありますが、

そもそも為替が予想できない中では、為替に対する防衛手法は次の2つが考えられます。

この為替の影響を少しでも減らす方法は下記のとおりです。

◆為替に対する防衛手法

①通貨分散投資をする

投資をする資産が為替の影響を大きく受けないように、

資産を全世界に分散することで通貨分散を図る方法。

これについては、債券の最後の総論について、述べさせて頂きます。

②為替をヘッジする

オプション取引を使用して、為替そのものの波をヘッジ(回避)することです。

なお、前述のとおり、利回りが比較的低いものに投資をしては、

結局のところ、為替負け、してしまうことがあります。

ですので、為替をヘッジする、と一言にいって、その中の債券を何にするかは非常に重要です。

では次回以降、数回に渡り、為替ヘッジについて深く考察していきましょう。

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