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2022.10.08

法人資産の運用を考える(47) 法人の運用責任者(CIO)の確保と育成を考える(1) 法人資産運用の最重要課題としての運用責任者(CIO)の確保・育成

ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一

前回までは数回に渡って「法人資産運用を支える学術・実証研究」について解説してきた。

過去約70年間にわたる学術・実証研究の最大の成果は、

我々投資家が資産運用を実施する際の意思決定基準を体系化したことであった。

つまり、

株式、不動産(REIT)、債券などの個別銘柄の選別・取捨選択をしないで、

市場全部に分散投資する、売買しないで単に長期投資というパッシブ運用(ETFなど)、

②市場の中から有利そうな個別銘柄選択・投資タイミング判断を積極的に行い、①の

パッシブ運用を上回ろうとするアクティブ運用(アクティブファンド、ESGファンドなど)、

③更に、市場価格、流動性の無い資産で個別銘柄選択、投資タイミング判断

積極的に行い、①②を上回ろうとする運用

(私募リート、未公開株ファンド、インフラファンドなど)、

 

それぞれについての意思決定基準を投資家にもたらしたのであった

(詳細は「法人資産運用を支えるロジック」シリーズを参照)。

 

さて、今回から数回に渡って、上記の意思決定基準をよく理解していることは勿論、

更に、現実の組織的な資産運用において、

法人を目標達成に導く仕事を担う

運用責任者(CIO=Chief Investment Officer)の確保と育成

ついて考えてみたい。

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法人の資産運用の実務を支えるのも、また、資産運用おける組織のガバナンスに

息を吹き込むのも、運用責任者(CIO)が中心的な役割を果たす。

すなわち、組織の資産運用の『持続可能性』を高めることも、

その結果としての資産運用の長期的な積み重ねである実績も、

適任の運用責任者(CIO)を確保、育成できるかが左右すると言って過言では無い。

まさに、法人資産運用の最重要課題なのである。

彼(彼女)らは前述した資産運用のロジック(学術・実証研究の歴史的な背景を含む)に

ついても深く理解しており、それに基づいた資産運用における

意思決定や選択にも精通している。

同時に、それの前提条件や限界が有ることについてもよく承知しているのである。

組織における資産運用についての長期的なシナリオを描き、

実際に組織の運用計画・提案・執行を積み重ねてゆけるのは、

そのような能力を備えた運用責任者(CIO)である。

また、彼(彼女)らは、組織の資産運用の『持続可能性』を高める為に、

投資方針書などを準備して、資産運用とその管理方法の仕様を

「文字」と「数字」で明記する。

更に、運用委員会(運用会議)や役員会においては、

口頭ベースの「平易な言葉」での補足説明を交えて、

組織内の円滑かつ通的なコミュニケーションの維持継続に努める。

つまり、組織的なガバナンスを浸透、維持させる「起点」の役割も果たすのである。

一方、組織の方は、彼(彼女)らの言動に矛盾や見落としがないかチェックしながら、

資産運用が『適切か否か』『持続可能か否か』について監督責任を果たしてゆく。

だから、法人にとって『適切な資産運用』の『持続可能性』を高めるための

最も重要なカギは運用責任者(CIO)であり、何をどうするかだけではなく、

なぜそうするのか(なぜそうしないのか)を判っており、

それを現実の運用で実行できる運用責任者(CIO)を最低一人、確保しなくてはいけないのである。

 運用責任者(CIO)の確保・育成の選択肢は以下の3つうちのいずれかしかない。

1)内部人材の育成(能力の引き上げ)

(2)能力の有る外部人材の法人内部者としての招請

(3)法人運用担当者・責任者の機能を、実績が有り、信頼できる先へアウトソース

のいずれかである。

また、(1)(2)のケースの場合は、彼(彼女)の後任育成も

法人内部で同時並行させないと『持続可能性』は高められない

(つまり、法人内部に2名以上の運用チームを編成して、1名を後任として育てる)。

次回以降、組織の運用責任者(CIO)について求められる場面、能力、機能の別に、

【A】法人内部者CIOを育成・確保する場合、

【B】CIO機能をアウトソースする場合、

【C】(年金)コンサル(その他一般の金融機関サービス)

を利用する場合とで比較、留意点について考えてみたい。

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