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2023.05.22

学校法人の資産運用を考える36  資産価値を減少させるインフレを考える

学校法人資産の運用を考える粟津 久乃

前回、前々回と株式不動産について説明をさせて頂きました。

これら2つの資産は比較的インフレに強い特徴を持っています。

学校法人の資産価値を実質的に維持するためには、

物価変動に対応できる資産も保有する必要が本当に必要なのでしょうか?

そもそもインフレとは何なのか、から細かく皆様に説明していきましょう。

インフレとは何か

インフレーション(Inflation)・・・

日々買っている日用品やサービスの値段(物価)が上がることをいいます。

一方、インフレの逆はデフレであり、デフレーション(Deflation)です。

デフレは日々買っている日用品やサービスの値段(物価)が下がることをいいます。

日本はそもそも、デフレでしょうか?インフレでしょうか?

日本政府が日本は緩やかなデフレであると認めたのは、2001年でした。

以来、デフレ脱却などといい、日銀もインフレに誘導するように努めてきました。

つまり、今まではデフレでした。

なぜ、日本はデフレから脱却したかったのでしょうか?

デフレは負の連鎖を産むといわれます。

長期的に物価が上がらない(デフレ)ので、企業は売り上げが伸びず、業績悪化に陥ります。

そうすると、従業員の給料は上がらず、消費者は買い物を控えます。

企業は消費をしてもらおうと、価格を下げ、さらに物価が一段と下がります。

という負の連鎖が起こるのです。

そのため、日銀はインフレへ誘導しようと、2%インフレ目標等を掲げてきました。

そして、今、ついに日本にインフレが到来しております。

皆様も実生活において物価が上がる、インフレを感じるのではないでしょうか。

インフレの到来

具体的に物価が上昇しているかを見ていきましょう。

インフレを語るとき、指数として使われるのは、

企業物価指数消費者物価指数になります。

そもそも物価は何なのでしょう?

物価・・・あらゆるモノの価格の平均のようなもの

では企業物価指数と消費者物価指数は何でしょう?

企業物価指数・・・企業が購入するモノについての物価変動を示す

消費者物価指数・・・消費者が購入するモノについての物価変動を示す

過去の日本は、企業物価指数は上昇するものの、企業が仕入れコストを低くしたり、

従業員の給料の給料を下げたりするなどの企業努力で、吸収し、販売価格へ

転嫁しないように頑張っていました。

しかし、ここにきて、企業努力だけでは抑えられず、

ついに消費者のモノの価格へ仕入れコスト高が反映され始めました。

                          NHKより

上記の図を見ると、企業物価指数は2021年より上昇を始めているのに対して

消費者物価指数はじわじわと上がっているものの、2022年以降に大きく上昇

し始めていることがわかると思います。

企業努力だけでは吸収できない状況になりました。

★例:うまい棒が1979年からずっと10円で販売されていましたが、

2022年4月、ついに10円から12円へ値上げされました!!

このように、徐々に、消費者物価指数はあがっております。

 

2023年の直近までの企業物価指数の動きは下記です。

                  日本銀行より

そして、消費者物価指数の直近の動きは下記です。

                      総務省統計局より

いずれも2022年から2023年に掛けて、物価が上昇していくことがよくわかります。

インフレに備えなければいけない理由

インフレになるとモノの値段が上がります。

一方、現金はそのままの価値ですので、相対的に貨幣の実質価値は下がるため、

低金利においては預貯金の実質価値も目減りしてしまうことになります。

                            日経新聞より

今までのデフレにおいては、預貯金を多量に保有しても物価が

上昇しなかったので、預貯金の実質価値は目減りせず、預貯金に

預けることが良いことという印象を国民に与えました。

しかし、上記図のように、48年ぶりに皆様の預貯金の実質価値は

おおよそ-4%の目減りをしています。

預貯金の金利で稼ごうと考えたとき、

預金利率が少し上がったとしても(1年物で0.02%程度)では

焼け石に水です。

物価が上昇したとき、現金の実質価値というものが減っていくのを

感じられるのが下記の図です。

                  三井住友銀行より

例えば、1,000万円を保有し、物価上昇率を年3%と仮定します。

20年後に持っていた1000万円でモノを買おうとすると、

現在の価値では553万円のものしか買うことができなくなります。

実際、物価上昇は将来どうなるかはわかりません。

しかし、少しずつでも学校法人の設備投資、人件費、様々な価値は変わるかもしれません

インフレに全く備えない、というのも選択肢としてはどうなのでしょうか。

資産の購買力維持、実質の資産価値の維持というのは、考えなければならない論点です。

インフレに対抗できる資産は何か

学校法人の資産運用を考えるコラムの34、35で詳細を記載しましたが、

株式不動産になります。

株式と不動産は、他の資産に比べ、資産の価値を膨らませる力があるといわれます。

株式を例にすると、短期的には変動が激しいものの、

インフレ時には企業の売上高が増加傾向になるため、

中長期でみると、インフレに強いとされます。

一方、債券と預貯金は、インフレに対して弱い側面を持っています。

固定金利の債券も固定金利の定期預金もインフレ上昇を勘案すると、

インフレ率以上の投資リターンがなければ、実質的には元本を棄損していることになります。

では、どうしましょう?

だからといって、単純に個別銘柄で、株式や不動産を大量に購入することはリスクが高すぎます。

どのように保有すべきかについては、次にポートフォリオのコラムにて触れます。

学校法人、公益法人にとってインフレを考えなければならない理由

今後、国内の物価上昇がどうなるかはわかりません。

しかし、学納金・補助金・寄付金の大幅な増加が見込めないならば、

長期的に資産の実質価値を保つ努力をする必要はあります。

2022年3月の理事会にて、人件費を上げるという話を聞いた、法人がありました。

組織において、人材というのは法人の将来を左右する重要なファクターです。

預貯金や債券ばかりで資産が増えない中、もし、今後、

資産の縮小が始めれば、優秀な人材は集められず、法人内部の力は衰えていきます。

学校法人を活性化し、さらに飛躍するためには、

預貯金ばかり、債券ばかりの運用の場合は、

中長期の資金計画を考える必要があるでしょう。

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