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2023.06.13

法人資産の運用を考える(55) 金融業界の潮流と法人資産運用の未来(3) 手数料の世界比較に垣間見える金融業界(流通)構造、利益相反構造

ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一

2022年3月31日、独立系大手投資調査会社の米国モーニングスターは、

北米、欧州、アジア、アフリカ地域の 26 市場において、

投資家の「ファンド手数料・費用」についての評価を発表した

(ある市場の投資家がミューチュアルファンド(追加型公募投資信託)を

保有するために継続的に負担する費用と世界の他の市場の投資家が

負担する費用を比較することで各市場の評価を行っている)。

以下、「上位」、「平均超」、「平均」、「平均未満」、「下位(ボトム)」の

評価尺度を用いて各市場を評価付け、公表している。

「上位」オーストラリア、オランダ、米国

「平均超」韓国、ノルウェー、南アフリカ、スウェーデン、英国

「平均」ベルギー、デンマーク、フィンランド、ドイツ、インド、日本、ニュージーランド、スペイン、スイス、タイ

「平均未満」カナダ、中国、フランス、香港、メキシコ、シンガポール

「下位」イタリア、台湾

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日本は「平均」にランクされる結果となった(日本でも高コスト商品は随分多い気がするが)。

近年、日本の法人の資産運用においても、幅広い分散投資が重視されつつあり、

その為のツールとしての投資信託などの各種ファンドやETFなどの利用も徐々に増加傾向にある。

このレポートによれば、

世界のファンド投資家にとって朗報なのは、より費用の安いファンドへと

資金が流れていること、既存の投資商品の費用設定が見直されていること

の双方が相まって、多くの市場で費用が低下傾向にあることです

ファンドの販売やアドバイスに関わる費用を、運用管理費用(信託報酬)

から切り離す動きが広まることは、透明性を高め、投資家が投資で成功を

収めるために必要な力となります

しかし、世界のファンドの業界構造は、購入時に手数料を徴収するしくみを

温存させたり、また、欧州とアジアの 18 市場では、ファンドの保有期間中に

支払う費用に販売やアドバイスに関わる費用を組み込んだりすること

広く浸透しており、投資家にとって重要となる明確さの欠如を招いている

可能性がありますこのことが、投資家よりも、販売会社、中でも証券会社と

銀行に大きな恩恵をもたらすという、利益相反につながるインセンティブを

生み出していると我々は確信していますと総括している。

「上位国」の米国やオーストラリアは、ファイナンシャル・アドバイスに対する

報酬を直接支払う方式へと移行していることをうけ、

パッシブ運用など費用が比較的安いファンドに対する需要増に拍車がかかっている。

金融機関やアドバイザーの間では、販売やアドバイスに関わる費用が

組み込まれた割高なファンドを避ける動きがさらに強まっている。

販売やアドバイスに関わる費用を、運用管理費用(信託報酬)から切り離すことが

一般化していることが評価されている

一方、「下位国」になるほど、証券会社、銀行、その他の仲介業者は

ファンドの販売を牛耳っている、支配している市場で、市場の圧力で、

投資家の手数料・費用が低下してゆくという兆候は無い。

つまり、投資家に対して推奨・提案されるファンド(にかぎらず金融商品全般)

の手数料・費用の構造は、金融商品の流通構造、業界構造に深く根付いており、

それらの構造が投資家の利益よりも、証券会社、銀行、その他の仲介業者の

利益を優先するという利益相反のインセンティブを生み出す温床になっていると言う、

グローバルでも、普遍的な法則が垣間見えるのである。

 

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