コラム

column

2019.11.15

学校法人資産の運用を考える(6) 法人を取り巻く制約条件と、資産運用との整合(2)金融ビックバンの歴史

学校法人の資産運用を考える粟津 久乃

もしも、今日の法人運用担当者が50年前にタイムスリップしたとしたら、さぞかし驚かれることでしょう。単に、当時の金利が高かったということではなく、利用できる金融商品の種類が驚くほど限られていたことに、です。なにしろ、預貯金や日本国債、上場株式以外には運用手段が存在しなかったといっても過言ではないのですから。

もしも上記に追記するとすれば、電力債・電電債・専売公社債、長期信用銀行など、債券発行による資金調達が政府によって許可されていた特別な企業による特別な債券ぐらいなのですから(今日の社債とは異なり、官製、半官半民あるいは政策企業による発行であったのです。また、殆どが担保付債券で、今日一般的な無担保債券は敬遠されていました)。発行量も限られていました。その他の民間企業の資金調達は、銀行借り入れに依存しており、今日のような社債は殆ど存在すらしなかったのです。したがって、進んで上場株式で運用しようとする法人があれば話は別ですが、殆どの法人の運用内容は預貯金や日本国債となるのは自明だったのです。

その後、1980年代の株式市場の活況(所謂“バブル”)と共に、ようやく民間企業による転換社債やワラント債などの発行が旺盛となりました。法人運用担当者にも、これらの“新しい運用手段”が提案され始めるが、殆どの法人は当時、投資を見送りました(一部の投機好き法人はこれらにのったが、バブル崩壊で痛手を負うことになりました)。

しかしながら、1990~2000年代に入ると、それ以前とは比較にならないほど多種多様な金融商品が法人運用担当者の前に登場するようになってきました。普通社債、劣後債、サムライ債、ユーロ円債、2通貨債(元本は円、利払いは外貨。のちの為替仕組債の原型)、リンク債(元本や利払いが株価水準などで変わる)などです。同時にこれらの金融商品の発行体も爆発的に増加しました。国内外の金融以外の数多の民間企業から、国内外の数多の政府・公的機関まで、まさに“金融商品のビックバン”でありました。

しかも、この頃に至っては、法人担当者も動かざるを得なくなっていました。なぜなら、バブル崩壊によって、既に預貯金や国債の利回りが急低下し始めていた為です。そして、残念ながら、このような“金融商品ビックバン”の歴史は、ダイエー社債、マイカル社債、アルゼンチン国債他サムライ債などのデフォルト、仕組債やデリバティブ投資の失敗など、現在に至るまでの法人資産運用における数々の汚点の歴史とも重なってしまったのです。

同時に、“金融商品ビックバン”の歴史は栄枯盛衰の歴史でもあります。かつて唯一、債券発行を許されていた銀行である長信銀をはじめ、有価証券の発行体の“品質”は時代と共に、栄枯盛衰を繰り返し続けています。更に、かつての転換社債、ワラント債、MMFやCRFなどがそうであったように、金融商品のスキーム自体も栄枯盛衰を続けるのです。

劣後債や仕組債も昔から存在したスキームではありません。これらの発行体条件、発行内容も昔に比べてどんどん変化し続けています。

要するに、法人投資家にとして、今一度、再考してみるべきは、『金融商品の発行体や発行のスキームが爆発的に増え続ける中で、かつ、それらが栄枯盛衰を繰り返し続ける中で、一体、何に、基準を置けば、一貫した資産運用を続けてゆけるのか』ということなのです。



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