コラム

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2026.09.16

GPIFを運用事例として議論する【11】オルタナティブ投資(3)ヘッジファンドとコモディティ

GPIFを事例に資産運用を考える粟津 久乃

オルタナティブ投資について、(1)~(2)でプライベートクレジット、プライベートエクイティ、不動産について触れてきました。

今回も引き続き、オルタナティブ投資の例を挙げながらメリット・デメリットを伝えていきます。今回の事例は「ヘッジファンド」「コモディティ」です。

ヘッジファンド

ヘッジ(hedge)という英語は、「防止策」「避ける」のような意味があり、金融では何らかの障害(リスク)を避けるという意味で使用されます。

そのためヘッジファンドは様々な方法を使って市場が上下どちらに動いても利益を出すような手法を取っています。

特徴

募集方法

通常の誰でも買える、公募の投資信託と違って、ヘッジファンドは少数の投資家を募集する私募形式が多いです。

また最近は、ヘッジファンドを直接購入するよりも、ポートフォリオの一部にヘッジファンドが組み込まれた私募ファンドとして募集することもあります。

運用目的

インデックスファンドならば、連動させる市場の指数(ベンチマーク)と同様に模倣して、市場と同様のパフォーマンスを上げることが目的ですし、アクティブファンドですと、ベンチマークを超過することが目的です。

ではヘッジファンドの目的は何でしょうか。相場が上下に動いても利益を出そうとする運用手法ですので、市場環境がどのようになろうとも、プラスを目指す絶対収益を狙うことを目的としています。

運用手法

通常のファンドの投資はロング(買い)と言われる、買って持ち続ける形式ですが、ヘッジファンドは、ロング(買い)とショート(売り)の両方を使います。またデリバティブ(オプション含む)取引も駆使します。

デリバティブ取引には、先物取引(将来の特定期日にあらかじめ決めた価格で資産を売買する取引)や、オプション取引(将来の一定期間内にあらかじめ決めた価格で買う・売る権利を売買する取引)、スワップ取引(金利や通貨などのキャッシュフローを交換する取引)などの手法があります。レバレッジ(少ない資金を担保にしてお金を借りて、元手以上の取引を行うこと)も活用するケースが多いです。レバレッジを使いますので、リスクも非常に高くなるケースがあります。

メリット・デメリット

メリット

  1. ①金融取引のプロ

    専門家に任せられるので、通常、金融の知識のない人でもデリバティブやレバレッジ等の高度な取引が可能となります。

  2. ②分散投資

    市場が上下どちらに動いても利益を出すことを目的に、投資するので、上手くいけば、市場全体の価格が下落する局面で損失を被るのではなく利益を出せる可能性があります。また市場の動きと違う結果が出る可能性があるため、分散投資によって、リスクを低減させる可能性があります。

デメリット

  1. ①流動性が低い

    購入時期も解約時期も事前に決められています。いつでも解約できるものではありません。現金化するのも時間がかかります。

  2. ②手数料が高い

    非常に手数料が高いため、運用成績が良かったとしても、成功報酬や運用コストで、利益が出づらい構造が存在します。

  3. ③情報が乏しいので、投資判断が難しい

    これが一番のポイントかと感じます。実際の中身を精査すること自体が難しいという問題があります。投資手法自体も高度であり、またその投資手法が優れていれば、その詳細の内容は公開されず、大枠の投資方針や投資戦略のみしか開示されないこともあります。

    誰にも理解が及ばないような投資に対して法人がどう判断するのか、そもそも判断ができないケースが多いからです。

公益法人としてのヘッジファンドへの考え方

まず、ヘッジファンドは基本的にハイリスク・ハイリターン前提であり、すぐに解約もできません。各法人において、そうしたリスクを取ってまでして、リターン水準を高めなければならないほどに高いリターンが必要でしょうか。運用目的と合致しているかを確認すべきでしょう。多くの法人の求める利回り水準は伝統的資産での運用で十分な範囲に収まっていることが多いです。

また、ヘッジファンドのリスク特性を勘案すると、ポートフォリオにおける投資可能割合は大きなものでなく、少額になる可能性が高いでしょう。その場合、そうした割合の規模で投資して分散効果は図れるでしょうか。高い利益率を誇るヘッジファンドは、簡単に小口で購入できる規模で販売されないケースが多いです。分散投資の観点においては、少額でも分散投資の意義があるのか考えるべきでしょう。

何よりも、投資判断が難しい、中身の全容がわからないヘッジファンドへ投資すること自体、法人の意思決定に適しているのかも、確認が必要でしょう。

コモディティ

コモディティとは英語で、「商品」を意味しますので、金融では、コモディティ取引とは、実際の商品、実物資産に投資をすることを指します。

貴金属(金・銀など)・エネルギー関連(原油など)・穀物(大豆・トウモロコシなど)・工業用金属(アルミ・ニッケルなど)のように実際の商品になります

購入手法としては、現物そのものを購入する(金を買う)、先物取引などもありますが、ポートフォリオの一部に組み込まれたファンド形式や、投資信託、ETFなど様々な形式で販売されることもあります。

メリット

  1. ①インフレに強い

    経済環境においてインフレが起きると、コモディティ全般もインフレ時に価格が上昇する傾向があります。

  2. ②分散投資

    伝統的な資産(債券・株式)と相関係数が低いため、ポートフォリオのリスク分散になる可能性があります

デメリット

  1. ①投資判断が難しい

    現物投資か先物投資がメインのため、公益法人のような組織では素早い判断を求められたりする投資判断自体が難しいです。また情報収集も難しいでしょう。

  2. ②金利や配当のインカム収入が無い

    公益法人にとっては最大のデメリットかもしれません。例えば、金や銀、原油、大豆などを想像するとわかりますが、金利や配当はありませんので、年間のインカムを維持したい場合、投資対象として目的と合致しないことになります。

  3. ③為替リスクがある

    基本的には有名な指数は海外市場での取引となるため、為替リスクもあります。

  4. ④価格変動が大きい

    価格変動の幅(リスク)が伝統的な資産と比較すると大きいといわれます。

公益法人としてコモディティ投資に対する考え方

コモディティの投資において、何もインカムを生み出さない構造であることは問題でしょう。公益法人の資産運用における目的は安定的なインカム収入を得ることではないでしょうか。投資目的が合致していない時点で、採用されづらい投資かと考えられます。

さて、今回は、2つのオルタナティブ投資について触れました。
次回はGPIFのオルタナティブの考え方と、公益法人にとってオルタナティブ投資が必要か、について触れていきます。

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