コラム

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2019.02.02

法人資産の運用を考える(5) 法人を取り巻く制約条件と、資産運用との整合(1)会計・決算の制約

ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一

拙著『新しい公益法人・一般法人の資産運用』でも問題提起しているが、現在、本邦法人の資産運用において、財産の損切りや取り崩しを何の抵抗もなく許容できるだろうか? 財産の損切りや取り崩しは避けて、保守的な運用内容を保ちたいと考えているのではないだろうか? では、それは、なぜだろう?


米国の大学基金が積極的な運用を行っているのに比べて、本邦の公益法人や学校法人の運用は保守的であるという比較がよくある。しかしながら、詳しく調べると全く構造から違うことが判る。米国の大学は法人本体の中では一切運用していないのだ。大学本体の会計、決算から完全に分離した寄付基金で自由な運用を行い、基金の時価総額の一定割合を元本も含めて取り崩し、それを大学側は、基金から『寄付金収入』として受け取っているのである。寄付基金の側では利子配当収入は勿論、売買損/益、更に取り崩し支出まで会計処理されるが、大学の側では毎年『寄付金収入』として計上するだけで済んでいるのである。


一方、本邦の公益法人や学校法人が米国大学基金のような運用を行えば、たちまち本体において、利子配当収入は勿論、売買損/益、更に取り崩し支出まで会計・決算処理しなくてはいけないのである。つまり、本邦法人は本体内部で資産運用する為、本体の会計・決算に全て反映される構造となっている(財産の損切りや取り崩しを含め)。会計・決算処理にあたって、例えそれが意図的なものであったとしても、資産運用に伴う売買損失や取り崩し支出の計上や説明を進んで行いたいと思う運用担当者や、それらを許容できる役員はどれだけ存在するだろうか? そして、このような取り崩し支出などは避けたいとすれば、事業・法人運営に必要な期間収益は、運用元本からの利子配当収入のみによって安定的に確保したいという運用目標へと帰着する。


債券運用は長年、このような法人本体の会計・決算にダイレクトに反映されるという制約の元で、運用目標を達成する為の一つの有効な“手段”だったのである。まず、安定した利子収入が見込め、約束された期日になれば償還が約束されている(あくまで名目的な金額である。勿論、発行体の信用リスク、デフォルトリスクが顕在化しない限りという条件付きでもある)。さらに、会計や決算にも完全に一致させて処理、説明することができる。利子収入 ≒ 計上収益であり、保有額面 ≒ 計上資産である。


しかしながら、このような会計・決算と法人資産運用が整合したのは、日本国債の利回りが2%~3%あった時代までであろう。今日では、発行体の格下げ・デフォルト、為替や株式市場の急変などの仕組債投資への影響など、本来の意図とは裏腹に、安定した利子配当収入を犠牲にしたり、会計・決算に損失の汚点を残したりすることも珍しくなくなった。


要するに、今日の法人資産運用は、会計・決算の制約に対して整合的な運用目標、すなわち、財産の損切りや取り崩しを避けて、保守的な運用内容を保つ、事業・法人運営に必要な期間収益は運用元本からの利子配当収入のみによって安定的に確保してゆく、その為には従来の考え方や“手段”についても再考せざるを得ない状況に置かれているのである。


以上

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