コラム

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2007.06.28

大学資金運用とガバナンス危機【その②】~ 重くなる現場業務と現場責任 ~

大学資金運用とガバナンス危機梅本 洋一私論公論(高等教育情報センター)

◆「資金運用管理業務の専任でいらっしゃいますか?」

資金運用担当者の方々にこのような質問した場合に、十中八九「いいえ」という答えが返ってきます。資金運用の他には、寄付金募集管理、借入れ・資産証券化・学校債発行等の資金調達、格付け取得、出納会計・決算処理、設備等の金融資産以外の資産管理に至るまで担当業務でいらっしゃることも珍しくありません。 つまり、資金運用は広範囲な業務の一部分にすぎないのです。このような状況で、前回のコラムで指摘したような資金運用(金融商品)の多様化は、現場の資金運用関係者にどのような影響をもたらしているのでしょうか。

◆資金運用(金融商品)の多様化で重くなる現場業務

以前の「満期が来たら次の預金や国債に切り替える」スタイルの資金運用では、現場の資金運用関係者は、半ば機械的に資金運用規程に定められている通りにするだけで業務を遂行できました。 ところが、仕組み債・代替投資(オルタナティブ)等も運用対象に含むようになると現場の意思決定・判断の要素は正に幾何学的に増大します。例えば、近年の大学法人の資金運用でもすっかりポピュラーになってしまった仕組み債についての某資金運用担当者との会話です。 資金運用担当者:「本学は仕組み債を中心に資産収益率アップを図っています」 コンサルタント:「仕組み債であれば何でも購入するのですか?」 資金運用担当者:「いいえ」 コンサルタント:「どのような仕組み債なら購入するのですか?」 資金運用担当者:「まず、信用格付けが最高またはそれに準ずるものです。本学では資金運用規程で信用格付けごとに債券の取得基準と保有基準について厳しく定めています」 コンサルタント:「他に購入を決める条件はありますか?」 資金運用担当者:「リスク少なく、なるべく高収益の期待できることです」 コンサルタント:「どうやってリスクを少なくするのですか?」 資金運用担当者:「為替水準によって利息がかわる仕組み債の場合、円安が進んでも利息が増えないような一定の上限(キャップ)を設ける代わりに、満期償還額が為替変動で減らないような特約、利息がゼロになる為替水準を相当な円高水準に設定、早期償還条項を付帯することでリスクを少なくします」 コンサルタント:「では、なるべく高収益を得るための要素は何ですか?」 資金運用担当者:「極端な円高にならなければ、つまり為替が横ばいまたは緩やかな円安であれば、あるいはそのようなことが期待できるタイミングで投資すれば預金や国債で運用するより高い運用収益が得られると考えています」 コンサルタント:「相当な円高水準、為替が横ばいあるいは緩やかな円安であるタイミングかどうかは、資金運用担当者のあなたが判断・意思決定されるのですか?」 資金運用担当者:「とんでもありません。責任が重過ぎます。仕組み債の提案については必ず上長に発行条件等を見せながら私から説明をして、上長が許可したものしか購入しません」 コンサルタント:「では、上長が判断・意思決定されるのですね?」 資金運用担当者:「いいえ、上長は為替水準や投資タイミングについてわかりません。ということは、実質的な判断・意思決定しているのは私ということなのでしょうか?」 コンサルタント:「・・・・」 上記の例のように、資金運用(金融商品)の多様化は、為替は勿論、(内外)金利、信用格付け、株価、商品市況、金融商品の仕組みについての現在の条件と今後の見通しやそれを取り巻く経済・金融環境等々の多岐にわたって、現場の誰かが意思決定する作業をし続けなくてはいけません。 さらに、これ付随して組織内での説明、承認、売買記録、損益記録・報告というセンシティブな作業も増大するのです。

◆“丸投げ”“お任せ” 運用の重い現場責任

このように近年重くなった現場業務の軽減の一つの解決策として、「●●ラップ・アカウント、◆◆投資顧問にお任せしている、あるいは複数の業者を運用成果で競わせている」と言われる資金運用関係者にもお目にかかる機会が増えました。確かに、一旦そのような商品、業者に“お任せ”してしまえば、法人の誰かがし続けなければいけなかった意思決定とそれに付随する業務を減らすことができます。しかしながら、それでも資金運用関係者の現場責任の重さは全く軽減されないのです。 つまり、こういうことです。常識的に考えても、自らする運用は不確実であるが、専門家と言われるプロに“お任せ”すれば確実であるということはあり得ません。そもそも運用というものは不確実性と切り離せません。プロの運用でも良い時もあれば悪い時もあります。 結局のところ、運用プロセスの殆どを”丸投げ“委託した場合、運用関係者はその商品・業者を運用結果で判断する以外にありません。ということは、同様にその運用関係者も組織から運用結果で判断される以外にないということなのです。むしろ、プロセスの正当性を説明できない分、より窮地に立たされる可能性もあるのです。

◆資金運用規程に定められたプロセスは本当に妥当なのか?

法人の資金運用規程では、「取得可能な資産」「信用格付け等による債券取得基準ならびに保有基準」、「特定銘柄、特定資産種類への投資割合制限」「ロスカットルール」「業務責任者」「報告を含む監督ルール」等の資金運用管理についてのプロセスを定めています。現場では原則、このルール、プロセスに従って業務を行っています。 前述のように、常識的に考えても運用というものは大なり小なり不確実性を伴うものである以上、結果よりもプロセスを問うものでなくては業務を円滑に進めることはできません。しかしながら、大学の資金運用(金融商品)が多様化している現在においても、上記のような資金運用規程に従っているかぎり、結果ではなくプロセスを問う構造に本当になっているでしょうか? 果たして、透明性がありかつ矛盾の無いプロセスといえるでしょうか? 結局、運用結果(しかも短期・単年度成果の良し悪し)で評価されてしまう構造なのではないでしょうか? <大学資金運用とガバナンス危機【その③】『隣り合わせになった、不測の評価損・損失リスク』へ続く>

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