コラム

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2022.04.04

法人資産の運用を考える(42) 法人の資産運用を支えるロジック(4)  金融市場=全ての投資家の運用成績の総和、という内部構造、均衡構造

ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一

米国経済学者ウィリアム・シャープ博士が1964年に提唱した

CAPM(Capital Asset Pricing Model 資本資産評価モデル)という

学術的アイデア、仮説、モデルの行き着く結論は、

驚くべき、だが不可避のものであった

(後の1990年、彼はノーベル経済学賞を受ける)。

『最適ポートフォリオ=最適な分散投資、最も効率的なポートフォリオ

=最も効率的な分散投資とは、(株式)市場そのものに他ならない。

同等のリスクを持つ他のどんなポートフォリオもこれより高い期待リターンは持ちえない。

また、同等の期待リターンを持つ他のどんなポートフォリオもこれよりリスクが低くなり得ない。

そして、もしも(株式)市場そのものが最も効率的なポートフォリオ

=分散投資であるというこの仮説が正しいのであるならば、

不必要なリスク(市場全体のリスクより大きなリスク)を取らずにこれに打ち勝つことは

誰一人として出来ないことになる。』

少し難解と感じられるかもしれないが、

このモデルの意味することが理解できれば、

殆ど全ての投資対象についても応用可能な、

ベーシックかつ共通的な意思決定・判断基準が体得できると言って過言ではない。

まず、マクロ的に金融市場全体をイメージしていただきたい。

ある一定期間での全ての投資家の運用成績

(手数料などの運用費用と税金を控除される前での運用成績)を

足し合わせると、同期間での金融市場全体の運用成績と一致するということ

が常に成り立っている筈である。

勿論、金融市場全体の運用成績を上回る一定の投資家は常に存在するが、

それは、同じだけ金融市場全体の運用成績を下回っている投資家が

存在しているという均衡、ゼロサムゲーム、裏表一体の関係の上に成り立っている。

【重要】金融市場(投資収益)の均衡の方程式

金融市場全体の運用成績=全ての投資家の運用成績の総和

(=金融市場全体の運用成績を上回っている投資家、下回っている全ての投資家の総和) 

*手数料などの運用費用+税金の控除前

言い換えると、

ある時点で金融市場全体の運用実績を上回っている投資家は、

金融市場全体のリスク(全銘柄に分散して、売買しないで保有し続ける)よりも

大きな追加的リスク(投資銘柄を市場全体に比べて絞り込んだり、

売買タイミングを計ったりするリスク)を引き受けた事でもたらされた結果である。

同時に、同様の追加リスクを引き受けても金融市場全体の運用成績を

下回っている投資家が必ず同じだけ存在することで成り立っている

(全ての投資家の運用成績が、市場全体の運用成績を上回ることは有り得ない)

常識的に考えても、このような構造が金融市場の内部で

常に成り立っていることは容易に理解できよう。

このように、全ての投資家の運用実績の総和が

常にその金融市場全体の運用実績と一致するという、

一種の均衡状態を維持しながら連続しているのが金融市場の姿なのである。

とすれば、我々、投資家は次の自問をしてみる必要が有る

金融市場全体の運用実績を上回っている投資家Aが居たとして、

「今後も常にAは金融市場全体の運用実績に勝ち続けられるか?」

「それはAの実力なのか、それとも、たまたま運なのか?」

「仮に、Aが実力の有るファンドマネージャーだととして、

我々は、優れた運用実績が判明する前に、ファンドAを選ぶことが出来るのか?」

「更に、手数料などの運用費用と税金などを控除した手取り運用実績でも、

より大きな追加リスクに見合う追加リターンは期待できるのか?」

という問いである。

そして、ロジックや数学(確率統計)を重んじる学者達の

これらの問いに対する洞察は、「それは極めて疑わしい」というものだった。

次回は、このようなシャープ博士の学説が機能するか、

正しいか否かの検証、実証研究の歴史について触れたい。

 

*本掲載は『証券投資の思想革命』(ピーター・バーンスタイン著)の内容を引用、意訳した内容が一部含まれます。

 

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