2026.01.14
法人資産の運用を考える(86) 法人(事業)の持続可能性 ⇒ 資産運用(管理)の持続可能性という視点
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
「超長期の将来にわたって法人(事業)の維持発展に寄与するか否かという基準で、全ての役職員は、あらゆる意思決定に努め続けるべき」ことは今さら言うまでも無いだろう。
特に、管理する基金の資産運用(管理)の結果の如何が、現在から将来にわたる法人事業や財務基盤に大きな影響を及ぼす財団や学校法人などの非営利法人は、これを決して疎かにしてはいけない。
つまり、これら法人においては、デフレ、インフレ、(市場の)ショックやパニック、更には、法人資産運用に携わる関係者(*)の交替、変化などを経ても尚、超長期にわたる
①安定的な事業支出(=年度運用収益など)+②法人財務基盤の維持拡大(=保有財産の実質的な価値の維持)
の達成を目指すべきである
(*ここで言う法人資産運用に携わる関係者とは法人内部の運用責任者・担当者、役員、資産運用委員、外部の助言者・助言会社、委託先のファンドマネージャー・運用会社の範囲にまで及ぶ)。
言い換えれば、超長期的な法人(事業)の持続可能性 = その法人の実施する資産運用(管理)の持続可能性にかかっている(デフレ、インフレ、(市場の)ショックやパニック、更には、法人資産運用に携わる関係者(*)の交替、変化などを前提とした資産運用(管理)の持続可能性を指す)。
一方で、多くの法人が行っている運用は、超長期にわたって法人(事業)の維持発展に寄与するだろうか?
「支払い予定も無い現預金を大量に保有し続ける」
「インフレ率に負けているのに過度な債券運用に固執し続ける」
「株価参照の仕組債に多額の投資をして多くの運用益が出ている」
「母体企業株式のリスクを認識しながら保有し続けている」
「たまたま大量購入した個別銘柄株式(銀行株など)などの増配・値上がりが著しい」
「金融機関から推奨されるがままアクティブファンドやオルタナティブファンドを購入している」
などなど、合理的、客観的にみて、資産運用(管理)の持続可能性(=法人(事業)の持続可能性)が疑わしい運用事例は多い。
少なくとも、上記のような法人の役職員は現状に「ある種の居心地の良さ」を感じているので、黙認しているように思われる。
「昔からの慣例として大量の現預金を保有続けてきた。今さらロスと思わない。自分の任期中は過去を覆す提案は避けたい」
「債券であれば発行体、格付け、クーポン、年限など目に見える条件で説明・提案ができる。債券以外は自ら説明・提案できない、自分の任期中は債券しかない」
「多額の運用益も上がっている。今さら仕組債以外に考えられない。自分の任期中は市況が暴落しないことを祈る、今までを自己否定する説明・提案は避けたい」
「昔から当然のように母体企業株式を保有続けてきた。リスクには目をつぶるしかない、自分の任期中は触れたくない」
「昔、買ってしまった個別銘柄株式(銀行株など)などが増配・値上がりしている以上、これについて自ら見直しを説明・提案する理由が見当たらない。任期中に問題が起こらない限りは」
「アクティブファンドやオルタナティブファンドは外部のプロのお墨付きなので(よく判らないが)お任せ、安心しきっている」
などである。
しかし、役職員が自らの在任中だけを切り抜けられたらOKとする短視眼的な思考が続くほど(怠慢、慢心、資産運用リテラシーの不足)、「長期にみて法人(事業)の維持発展に寄与する」という基準に適合するような、持続可能性の高い資産運用(管理)とはかけ離れてゆくのである。