コラム

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2022.06.12

法人資産の運用を考える(43) 法人の資産運用を支えるロジック(5)投資家は、金融市場全体の運用成績を上回り続けることはできるのか?

ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一

今回は、米国経済学者ウィリアム・シャープ博士が

1964年に提唱した学術仮説、

CAPM(Capital Asset Pricing Model 資本資産評価モデル)

という学術仮説が、現実に機能するか、正しいか否かの検証、

実証研究の歴史について触れたい。

株式, 取引, モニター, 仕事, ファイナンス, 両替, 投資, 市場

『もしも(株式)市場そのものが最も効率的なポートフォリオ=分散投資(≒市場に存在する全ての銘柄を保有して、売買しないで持ち続けること)であるという、

この仮説が正しいならば、

不必要なリスク(市場全体のリスクより大きな追加的リスク≒市場全体の中から一部の銘柄を選別投資したり、売買タイミングを図ったりすることに伴うリスク)

を取らずにこれに打ち勝つことは誰一人として出来ないことになる。』

ということを確かめるには、これを反証できれば良い。

つまり、不必要なリスク(市場全体のリスクより大きな追加的リスク)を

取る投資家の運用成績を徹底的に検証してみるのである。

そして、金融市場全体の運用成績に対して勝ったり、負けたりしている事実と、

その投資内容と、最終的な彼(彼女)らの運用実績のデータとがどうなっているのか、

金融市場全体の運用成績のデータと突き合わせて確認してみれば良い。

結果、金融市場全体の運用成績の方が有利であったなら、

金融市場そのものが最も効率的なポートフォリオ=分散投資であるという仮説の確からしさが裏付けられてゆく。

このような実証研究の対象は、プロのアクティブ運用ファンドマネージャー、

証券アナリストや証券ニュースレターの推奨銘柄まで広範囲に及んだ。

検証の結果は、不必要なリスク、追加的なリスクを負うことで、

金融市場全体の運用成績に勝っているサンプルは常に存在する

(同時に市場全体に劣後するサンプルも常に存在している)。

しかしながら、ある時期に市場に勝っているサンプルで、

その後も永く勝ち続ける事例は非常に少ない。

稀に、例外的に永く勝ち続けているサンプルも存在する。

しかしながら、過去にさかのぼって、

そのようなサンプルだけを投資家が選択できたかどうか、

あるいは今後将来について、それが実力なのか、

たまたまの運なのかを投資家が評価できるかどうかは

「極めて疑わしいこと」、などが次々に明らかにされていった。

そして、今日でもプロが運用するアクティブ運用ファンドの実績は検証され続けている。

例えば、モーニングスター社のアクティブ運用ファンドの最終的な勝率を含めた

「アクティブ/パッシブ・バロメーター(2020年12月末基準)」

などが有る。

これによれば「10年以内に4割以上のアクティブ運用ファンドが償還したこと」、

更に「償還しなかったアクティブ運用ファンドが、

パッシブ運用ファンド(≒市場に存在する全ての銘柄を保有して、

売買しないで持ち続けるファンド)に負けた割合は、

多くのカテゴリーで7割~9割以上だったこと」が判明している。

理論的には、勝っているモノ、負けているモノが

半々ぐらいの割合で存在しても良さそうなものだが、

割高な運用コストが毎年差し引かれる分、

プロの勝率は経過年数に比例して更に小さくなってゆく。

(*これはプロのファンドマネージャーやアナリストが

決して無能であるからではなく、みな非常に優秀であるが為に

起きる現象だとも言われている。

情報が瞬時に伝わるようになった社会の中で、

皆がずっと見落とし続けるような収益機会を

長い間独占し続けるのは難しい、優秀な者同士、利益獲得機会の厳しい争奪競争に

常に晒されているからだ。)

さて、数多くの実証研究によって金融市場そのものが

最も効率的なポートフォリオらしいということが裏付けられていき、

ついに1971年、米国ウェルズファーゴ銀行の機関投資家運用部門が

世界初の米国株式パッシブ運用ファンドを年金基金顧客向けに提供するに至ったのである。

今日、パッシブ運用ファンド自体も改良を重ねられ、

様々な株式市場、不動産(REIT)市場、債券市場などの

ほぼそっくり全体を複製、トレースする投資戦略・手段として

世界中の機関投資家をはじめ、日本でも個人の積み立て投資家の間に広く浸透し、

現在も広がり続けていることは皆さんもご存じではないだろうか。

*本掲載は『証券投資の思想革命』(ピーター・バーンスタイン著)の内容を引用、意訳した内容が一部含まれます。

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