2026.03.17
【財団法人・学校法人のための資産運用入門(12)】公益法人制度改正と公益法人の資産運用
学校法人・公益法人の資産運用入門梅本 亜南
2025年4月から新しい公益法人制度が始まり、一期目の期末を迎えようとしています。今回の改正は、「資産運用そのもの」ではなく、「目的や規律の曖昧な運用」を問題と捉え、従来よりも中長期的な事業継続の文脈の中に資産運用を位置付けやすくした改正であると言えます。この点を踏まえると、公益法人にとって適切な課題設定は、「運用をしてよいのか」ということではなく、「どのような目的とルールのもとで運用するのか」であるということがより明確になったと言えるでしょう。
改正の内容とその意味
今回の改正では、財務規律の柔軟化・明確化、行政手続の簡素化、透明性やガバナンスの充実などが打ち出されています。その中でも、実務への影響が特に大きいのは、従来の「収支相償」の考え方が見直され、「中期的収支均衡」へと移行した点でしょう。旧制度のもとでは、「公益法人は黒字を出してはいけない」「資産を増やしてはいけない」といった受け止めが現場で広がりやすく、結果として、資産の保有や運用について必要以上に消極的、あるいは委縮した判断がなされることが少なくありませんでした。今回の改正は、そうした硬直的な捉え方を修正し、単年度ではなく一定期間の中で財務の均衡を見ていくことで、公益法人がより中期的な事業継続に視座を移すことができるようにしたものと理解できます。
「運用しないこと」のリスク
もちろん、今回の改正は、公益法人にどのような資産運用をも認めたことを意味するものではないでしょう。改正が念頭に置く問題とは、「資産を運用しないこと自体」ではなく、「運用の目的が曖昧であること」、「手段としてのリスクの考え方・取り方が非合理的であること」、また「運用を管理・監督するための組織内ガバナンスが機能しないこと」であるからです。
ここで改めて考えたいのは、何をリスクと捉えるべきであるのかという点です。公益法人では慣例的に、価格変動のある資産を持つことが非常に重大なリスクであると見られがちです。実際に弊社とお話をさせていただく公益法人の中にも、そのように考えられる法人は多く見られます。また、担当職員と役員との間に認識の隔たりがあるなど、法人内部も一枚岩ではない様子がうかがえます。
しかし、預金や債券に資産を過度に固定することが大きなリスクであることは、前回のコラムが扱った通りです。物価上昇が続く局面では、名目上の元本が維持されていても、資産の実質的な価値は徐々に目減りしている現状を適切に認識すれば、運用を行わないこと、あるいは債券に偏り続けることが、法人財産をリスクにさらしていることは明白と言えるでしょう。
このような体制は、改正の趣旨である「中長期的な事業継続」の観点が十分に考慮されていないと考えられるのです。
【ご参考:前回コラム】『インフレ環境下における債券運用の名目リターンと実質リターン』
おわりに
今回の制度改正は、公益法人にとっての資産運用を、従来よりも中長期的な視点で捉えることを促す改正と言えるでしょう。昨今の政治・経済状況も相まって、今後より一層、そういった視点から法人の運用体制を構築していけるか否かは、公益法人の事業継続における明暗を分けるものとなる可能性があると考えています。