2026.06.10
法人資産の運用を考える(91) 法人資産運用における最大のリスク【関与する人材がもたらすリスク】
ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一
受益者の為の基金を適切に資産運用すべき法人(財団、社団、学校法人など)は、その経常的な事業継続や将来の財務基盤の保全の為に
①安定した(利子・配当)収益を確保し続けると共に、インフレに負けないよう
②長期的な資産の保全・成長(=実質的な資産価値の目減りの防止)
を図らなくてはいけない。
つまり、短期的な視点だけでなく、長期的な視点からも、①②の目的達成できるような合理的、持続的かつ説明性の高い意思決定を下し続けなければいけない。
言い換えれば、法人資産運用の意思決定にあたっては、①②の目的達成に照らして、合理的か?持続性はあるか?(長期的な視野にも適っているか?)説明性はあるか?などのポイントをクリアし続ける必要がある。
当然だが、半永久的ともいえる法人の運用期間の途中には、最近のトランプ氏など政治による市場の混乱や、リーマンショックやコロナショックなどの経済要因から来るデフレ⇔インフレなどによって、市場(株式、金利、為替など)が大きく上下動を繰り返し続ける。しかしながら、変動し続ける市場の中にあっても、法人は①②の目的達成の為に、合理性、持続性(長期的な視野)、説明性について一貫した資産運用を行っていかなければならない宿命である。
著者は、市場(株式、金利、為替など)とその変動にではなく、この点にこそ法人資産運用における最大のリスクが潜むと考える。つまり、運用目的は何か?合理性、持続性、説明性はあるか?を最終判断しているは人間だという点である。
例えば、法人の資産運用に関与する者が、金融市場・資産運用の体系的な知識や実証データ(『非営利法人のための資産運用入門』第4章、第5章で解説)について知らない場合、預金・債券への傾倒、また分散投資しないで個別銘柄の株式や債券、REIT投資などに傾倒するかもしれない。あるいは短期的な資産価格の上下動に翻弄され、無駄な売買や売買タイミングを計ろうとするかもしれない。
また、法人の資産運用に関与する者が、本来の運用目的①②とは異なる基準で意思決定を始めたり、それを促す推奨をしたりするかもしれない。チェックポイントはそのような意思決定やそれを促す推奨が本来の運用目的①②ではなく、資産運用に関与する誰かの他の目的、利益を満たそうとするものではないか?を慎重に検証・問うてみることである(法人の資産運用に関与する者のチェックポイント、利益相反の留意事項などについては『非営利法人のための資産運用入門』第8章で解説)。
外部の関与者(金融機関、コンサル、外部運用委員など)の場合、自分の利益や存在感のアピールを優先して、自分側により利益をもたらす商品・サービスを推奨したり、専門家らしさをアピールするような複雑・理解困難な提案をしたりするかもしれない。
一方、内部の関与者(理事長、担当理事、担当スタッフなど)の場合、自らの任期だけを考えて、自分が楽な意思決定、自分の手柄となるような意思決定に固執するようになるかもしれない。
このような法人資産運用に関与する様々な人材がもたらすリスク(特にそれらの人材の交替・引継ぎ時は要注意)は、市場の変動リスク以上に、長期的な法人運営に与えるインパクトは大きい。なぜなら外部者であれ、内部者であれ、共通するのは、長期的な法人(その受益者)の利益よりも、短期的な自分の利益や立場を守ることを優先して合理性のない推奨、意思決定してしまうからである。このことは将来大きな損失を法人とその受益者にもたらす。