2026.03.17
GPIFを運用事例として議論する⑧オルタナティブ投資(1)
GPIFを事例に資産運用を考える粟津 久乃
今回はGPIFの運用事例を見ながら、オルタナティブ投資について触れていきましょう。
目次
◆オルタナティブ投資とは
「オルタナティブ(alternative)」という言葉は「代わりの、代替的」という意味があります。投資においては、株式や債券などに投資することを「伝統的資産への投資」と考えています。一方、この伝統的な投資手法と異なる、代替的な資産を「オルタナティブ投資」といいます。
◆オルタナティブ投資の例
オルタナティブ投資というと、伝統的資産への投資以外の代替的な投資を指しますので、様々な投資手法があります。
主なオルタナティブ投資の例を挙げていきましょう。
①プライベートエクイティ(PE)
上場していない企業の株式(非公開株式)への投資を指します。そのため、一般的な流通市場はありません。また、PEは創業して間もないというよりも、既に安定した業績のある会社の非上場株式になります。
★プライベートエクイティファンド
通常、投資家がこれらのプライベートエクイティへ投資をする場合は、プライベートエクイティファンド(PEファンド)を通じて投資をします。PEファンドは投資家より資金を集めて、投資先企業を選定して株式取得をします。PEファンドは投資先企業の成長戦略や経営改善等を支援して、企業価値を高めてIPOやM&Aによる売却で利益を得ることを目的としています。
PEファンドの最終目標は売却益を大きくすることであり、途中に配当を出すことを目的としてはいません。
財団法人が、PEファンドを購入する場合は、利益や配当について財団の収益目標と合っているかの確認も必要です。年間の安定した配当をずっと取り続けることを主目的としている投資家にとっては目的が若干違うことがあるからです。
また、新興企業や成長期企業への投資になるため、ハイリスク・ハイリターンでもあります。
★VCファンド(ベンチャーキャピタルファンド)
VCファンドもプライベートエクイティの一種です。創業期やスタートアップ企業に投資を行います。そのため、10年前後と投資期間が長くなる特徴があり、PEファンドよりも更にハイリスク・ハイリターンの傾向があります。
プライベートエクイティファンドのメリット・デメリット
メリット
投資した企業が大きく成長して、IPO(上場)したり、M&A(買収)されたりすることで、リターンが何倍、何十倍にもなる可能性を秘めていて、大きなリターンが期待できます。伝統的資産への投資とリスク・リターンが異なるため、資産全体としては分散効果が得られます。
デメリット
市場が存在しなので、売却を希望しても、すぐに売却できないことがあります。企業の成長が順調に行かなければ、投資した資金が戻ってこないリスク(破綻)もありえます。また、ファンド形式で投資を行っても、プライベートエクイティだけの投資内においては分散効果が薄く、破綻時の影響を強く受けます(インデックス投資ならば、数社破綻してもあまり影響がない可能性が高い)。投資期間が5年~10年と非常に長く、投資を途中で辞めることも難しいことも特徴です。
②プライベート・クレジット
プライベート・クレジット投資とは銀行融資や社債投資によって、企業に資金を投資するのではなく、企業へ直接融資をする運用手法(ノンバンク融資)です。こちらも一般的に流通市場がありません。
直接投資する先の企業から受け取る利息は主に変動金利であるため、利率が確定している債券投資と比べて、金利変動による価格変動リスクを低減することを期待して投資するケースもあります。
プライベート・クレジットの場合も、PEと同様、ファンド形式を利用するケースが主です。
★プライベート・クレジットファンド
プライベート・クレジットファンドは、投資家から集めた資金を直接、企業へ投資する形式となります。主な借り手は中堅企業などで、銀行融資に比べ金利が高く、投資家が得る利回りも社債を上回るなどの特徴があります。
融資条件は個別交渉で決められるため、それぞれのファンドが異なる条件になっています。プライベート・クレジット案件の投資期間は7年程度が多いといわれます。
ちなみに、プライベートアセット(未公開資産)に対する投融資(投資と融資)の総称として使われることもあります。
プライベート・クレジットファンドのメリット・デメリット
メリット
通常の債券よりも高い利回りが期待できます。プライベートエクイティと違い、利金を定期的に排出するスタイルなので、財団法人・学校法人の運用目的と合致します。伝統的資産への投資とリスク・リターンが異なるため、資産全体としては分散効果が得られます。
デメリット
万が一の企業の破綻時においては財産分配権が最弱になるので、ほぼ回収は不可能になります。
市場が無いので、流動性が低く、売却できない場合も多いです。金利上昇した場合、金利が変動のため、投資先企業が支払えなくなり、債務不履行が発生することもあります。
次回以降、不動産、コモディティなどを説明し、更に、オルタナ投資の現状にも触れていきます。