コラム

column

2022.11.19

学校法人の資産運用を考える31 債券投資の基本がわかるシリーズ13メリット・デメリット①

学校法人資産の運用を考える粟津 久乃

今回以降は、ここまでの債券投資シリーズを纏めていきたいと思います。

債券投資の最大のメリット・デメリットを考えつつ、

学校法人が資産運用にどのような目的を定め、そこに向かう手法を選択するべきか、考えていきましょう。

◆債券の最大のメリットは何か

債券は金利が確定していることがメリットだと考える人も多いかもしれません。

(例外として、仕組債などは金利が変動するものもあります)

皆様が考えるように、債券の金利収入は魅力的です。

そして、学校法人として資産運用する目的は、定期的な安定収入を得るためですから

目的と金融商品の整合性も非常に取りやすいです。

 

また、「投資は継続できるか」が重要ですが、

学校法人として資産運用を継続できるための重要な意思決定のポイントは

「利子配当が継続して、安定して計上されること」なのでしょう。

これが実現できれば、理事会も運用担当者も投資を継続する必要性があり淡々と継続が可能です。

そのため、利子配当が安定することはとても大事だと感じます。

 

しかし、現状の日本の低金利下では、利子配当をある程度の水準で、高格付けの日本国債などの公債だけでは難しいのが現実です。

一方で、日本国債以外の債券に手を出せば、①価格変動も②デフォルトリスクも伴います。

日々、債券も価格変動します。マーケットが大きく動くときもあるでしょう。

 

では、こうした日本国債の金利が低く、高格付けの債券以外に運用範囲を広げるとき、

債券を保有する最大のメリットは何と捉えれば良いでしょう?

 

普通、皆様が債券を使用する理由は、債券は利息が確定している、こと

デフォルトしなければ、満期に満額で返ってくるというメリットがあることでしょう。

会計上も整合性が取れ、理事会でも承認を得られやすい特性があります。

これらは、債券のメリットといえます。

ただ、金融に携わる人々にとって、債券をポートフォリオの中に入れる際の

債券の最大のメリットを考えると、それは上記のことではないでしょう。

 

なぜ、ポートフォリオに債券を入れるのか、というと

その答えは、金融市場全体に大きい価格変動がおきても、

「価格変動を抑制する力を持っていること」という債券の最大のメリットがあるからでしょう。

 

人間には、リスクを嫌う、という性質が本来あります。

それが学校法人になればなおさら、リスクを避けたいと思うでしょう。

長期保有目的でも、余りに大きな価格変動は、理事会を毎期超えて、長期で保有することを難しくさせます

そうした中、債券は、金融市場がとても不安定になっても、評価額の変動幅を抑制し、皆様の不安定な心を和らげる力があるといわれています。

 

実際の大きな価格変動を抑制する力を見ていきましょう。

これはリーマンショック時の資産別の価格変動の図になります。

緑でマークしている部分は、債券になります。オレンジ色は株式とREIT(不動産)です。

2008年の年次の価格の動きは、日本債券が+3.4%、米国長期国債が+33.7%、米国債券(総合)が+5.2%となっています。

このように、格付けの高い債券は、市場が急落する状況では、価格が上昇したことが分かります。

 

一方で、米国社債(ハイイールド、格付けの低いジャンク債)が-23.9%、新興国国債が-5.1%など、格付けが低い債券に関しては、価格が下落することが分かります。

(外国国債が-15.7%ですが、全世界の国債が入っていますので、先進国も新興国も入っています)

しかし、その下落幅は、株式・不動産の下落と比較すると、少ないことが分かります。

 

先進国株式は-54.8%、新興国株式に至っては、なんと-63.4%の下落ですから、その下げ幅と比較すると債券というものが価格変動を抑える力があることはわかるでしょう

 

リーマン・ショックを例に出したのは、金融市場の下落という事象としては下落幅が大きく、稀に見る極めて低い確率で起こるような大きな事象のためです。

このくらい急激な下落時の変動幅を理解しておくことは、投資継続において重要です。

リスクを管理するとは、万が一の時に、耐えられる(必要なお金がある)ということであり、

こういう万が一の下落幅を想定していることは重要です。

 

そして、この珍しいくらいの大きな価格変動の局面で、皆様に感じて頂きたいのは、格付けの高い債券こそ、こういった世の中の金融市場の不安定なときに価格が上がる、もしくは価格下落が低く留まる、という資産の価格の動きを抑える力が働くということです。

 

この価格の動きは、コロナショックでも、同様に起こりました。

コロナショックでも、格付の高い債券価格は上がり、格付けの低い債券価格は下落しても、株式や不動産ほどは下落しませんでした。

 

この万が一の時に、価格が上がる、価格が下がりづらい、という効果は本当に素晴らしい債券の最大のメリットです。

 

◆債券の最大のメリットを活かすには

では、債券が価格変動を抑制する効果があるならば、

それを利用して、価格変動の高いものをポートフォリオとして保有することができます

つまり、例えば、価格変動の比較的高い(裏側では長期的にリターンの高いとされる)株式やREITを保有し、ポートフォリオ全体のバランスを取ることが可能です。

前項で、②デフォルトリスクについても債券運用において、

皆さんが気にされるでしょうが、このデフォルトリスクを避けるならば

(日本国債で100%ポートフォリオを設定することを除けば)、

方法は分散投資をするしかありません。

債券の最大のメリットを活かすならば、

分散されたインデックス運用によるポートフォリオを構成し、

その中で、債券の特性を活かすことこそに意義があります。

(より詳しいポートフォリオ運用に関しては別途纏めます)

では次回以降、債券のデメリットについて触れます。

 

ARCHIVES

2024年

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

お問い合わせ

CONTACT

ご記入内容をご確認の上、「送信する」ボタンを押してください

御法人名(必須)

御担当者様(必須)

郵便番号

住所

電話

FAX

メールアドレス(必須)

メールアドレス(※再度入力)(必須)

お問い合わせ内容(必須)