コラム

column

2024.02.14

学校法人の資産運用を考える44運用利回り目標をどう定めるか①

学校法人資産の運用を考える粟津 久乃

今回は、学校法人が資産運用において、実際に運用利回りをどのように設定しているか、アンケート結果を検証しつつ、如何に設定すべきかを考えていきましょう。

アンケートは2022年7月に調査された「大学法人における資産運用状況調査(大学経営協会より)」の私立大学の結果を考察していきます。

回答の前提:私立大学183校の回答、生徒数で下記の通り私立①~③へ区分

*下全てのグラフは大学経営協会の大学法人への資産運用状況調査の結果より弊社作成

◆そもそも有価証券を行っているか?

まずは有価証券運用の有無についてみていきます。

有価証券とは株式・債券・手形・小切手などを指します。この設問においては、預貯金等ではなく、株式・債券等の資産運用を行っているかを聞いた結果となっております。

私大合計では183校中の150校、82%が「はい」を選択しました。規模が大きくなれば、「はい」の回答が増えており、私立①②ではほぼ資産運用を行っていることがわかります。

◆基本ポートフォリオを設定しているか

ここで質問されている基本ポートフォリオとは、長期的な観点から安全かつ効率的運用を目的とした各資産を組み合わせた資産構成割合となります。

このような基本ポートフォリオを設定しているかについては、私大合計では「はい」と答えたのは50校の約30%に留まり、約70%が「いいえ」と回答しました。

この設問に対しても、規模が大きくなると、「はい」と「いいえ」が均衡していき、基本ポートリオを策定している割合は増加していきます。

◆ポートフォリオ全体の目標利回りを設定しているか

では今回の課題となる目標利回りを設定しているか、についての質問をみていきましょう。

私大合計では目標利回りの設定についている、「はい」という回答は50校になり約30%に留まりました。

ここまでの3つの質問より判ることは、資産運用は多くの学校法人が行っているものの、最終的なゴール(目標利回り)設定はしていないことがわかります。

小規模な私立①については、資産運用自体は、75%が資産運用を行っているが、20%しか目標利回りは設定していないとなっています。全体の傾向としては規模が大きくなるほど、目標利回り設定をしている割合は増えていきます

これは、私立②、私立③においては96%が資産運用を行っていることから、法人の規模が大きくなると目標利回りを設定する必要性が増している可能性が高いです。

資産運用を行う上で、金融のプロならば、目標設定をせずに運用することはありません。規模の大きい学校法人の資産運用ならば基本ポートフォリオを策定して目標利回りを設定することは必要でしょう。

一方、多くの法人が目標設定せずに運用できる理由は、現在の資産運用の内容にあるのかもしれません。運用可能資産に占める金融商品の構成比率を調べると、預貯金が約60%、債券は約30%を占めています。

多くの法人が有価証券運用をしていると回答していても、それはほぼ債券運用であるのです。

基本ポートフォリオとは、長期的な観点から安全かつ効率的運用を目的とした各資産を組み合わせた資産構成割合であると、記載しましたが、今回の有価証券運用に「はい」と答えた実体をみると、各資産に分散されてはおらず、ほぼ債券であるので、ポートフォリオの設定も目標利回りの設定もしないのかもしれません。

しかし、本当にこれで良いのでしょうか?

過去のコラムでも掲載しましたが、文科省も国立大学へ基本ポートフォリオの策定を求めています。

参考:国から示された資産運用ガバナンスのモデル

目標利回りを設定することは必須です。

また、少子化、インフレ、金利環境の変化、様々な要因の中で学校法人が生き残るためには、預貯金や債券だけでは学校の資産を保全できないのではないでしょうか。

◆最近(過去3年間程度)、新に取り組んだ金融商品は?

実際、最近、取り組んだ金融商品への回答に対して、上位に入ったものは、金銭信託・貸付信託、国内民間債、仕組債(元本リスクあり)、株式投資信託でした。

この中で注目されるのは、株式投資信託が上位に入ったことでしょう。多くの法人が債券や預貯金等ではなく、資産運用の幅を広げる必要性を感じているのです。

こうした運用の幅を広げるならば、ポートフォリオと目標利回りの設定の必要性は高まるでしょう。

次回は、実際の法人の目標利回りの水準と、実際の運用収入から見える問題点をみながら、最終的には、如何に運用利回りを設定すべきかを考えていきたいと思います。

ARCHIVES

2024年

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

お問い合わせ

CONTACT

ご記入内容をご確認の上、「送信する」ボタンを押してください

御法人名(必須)

御担当者様(必須)

郵便番号

住所

電話

FAX

メールアドレス(必須)

メールアドレス(※再度入力)(必須)

お問い合わせ内容(必須)