コラム

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2019.05.30

法人資産の運用を考える(8) 法人を取り巻く制約条件と、資産運用との整合(3)投資アドバイス業とフィデュシャリー・デューティー(FD)

ショート連載コラム公益法人協会梅本 洋一

50年前は法人資産運用の手段として預貯金と国債ぐらいしか存在しなかった。それが、1980年代、金融商品の種類はどんどん増え続け始めた。やがて、1990年代後半、本邦金利の低下に伴い、膨大な種類の金融商品の中から、個々の発行体の業績や格付けなどの信用リスク、為替、株価、金利など世の中の変動・変化について、その時々の「当てっこ」を運用担当者に求め続ける業務へと完全に変質してしまった。これが今日までの歴史である。


預貯金と国債ぐらいであれば普通の運用担当者でもマネジメントできる。ところが、今日では、「どの金融商品を買うか」「いつ買うか」「買った後どのように管理するか」ということまで法人側が責任を持たなくてはいけない。そのような情報収集、判断、管理の業務を普通の運用担当者だけで「do it yourself流」に完結させることはだんだん困難になってきている。だから、多かれ少なかれ他の誰かの情報提供などの力を借りていることになる。つまり、証券会社など外部からの情報提供・提案を参考にせざるを得ないのである。


しかしながら、ここに法人資産運用を取り巻く動かしがたい制約条件の一つが存在する。法人側はこれに十分に留意してゆく必要がある。拙著『新しい公益法人・一般法人の資産運用』で詳しく触れているが、金融ビジネス(銀行、証券会社、コンサル、運用会社など全て)は投資家が負担するコスト(手数料、管理料など)の上に成り立っているという事実である。だから、金融ビジネス側は往々にして彼らの収益がなるべく多くなるように、投資家を誘導するバイアスがかかる。投資家側の高コスト負担を正当化できるように、シンプルなものより複雑なもの、流動性の高いものより低いもの、公で価格競争原理の働くものより彼らの独自性・専売性の強いもの、更に彼らの専門性やリサーチ力をアピールできる商品やスキームに投資家を誘導したがる傾向が有る。しかも、金融の統計によれば、高コストの商品やスキームは投資家側の高いリターンとは一致しない。それどころが、高コストは確実に投資家利益を損ない続け、その多くが、長期的にはシンプルで低コストの商品やスキームでの運用さえも下回るという実証研究の結果もたくさん存在するのである。


昨今、金融庁が各金融機関に指導しているフィデュシャリー・デューティー(FD 受託者責任)には上記の背景が存在している。法人に対する投資アドバイス業がFDをクリアする為には、①アドバイザーの質(手数料・管理料収入や会社の人事評価を全く意識しないで良いとしたら、投資家の為に、どんなアドバイスが出来るか?)②投資家負担コストの妥当性(投資家の利益とバランスするか?高すぎないか?投資家の利益を損なわないか?)③上記①②の要件を満たした上での持続可能性(顧客へ継続サービスが可能か? 低収益でも事業が維持可能か?)、が求められる。しかしながら、①②③をクリアする投資アドバイスを提供する会社と出会うことは非常に難しい。そもそも、①の、「手数料・管理料収入や会社の人事評価を全く意識しないで良いとしたら、投資家の為に、どんなアドバイスが出来るか?」という核心に今まで真剣に向き合ったことの無い人材が金融業界には未だ多いように思われるのが、一番の危惧である。


以上

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